在日コリアンの皆様は、日本国内で出生された場合については(韓国籍の方、朝鮮籍の方の別にかかわらず)特段煩わしい手続きを取ることなく、容易に「特別永住者」の資格を取得することができます。

皆様は、その「特別永住者」の資格が取得できる根拠となっている法令についてご存知でいらっしゃいますでしょうか。

本来は身近な法律であるはずなのですが・・
あまりに身近過ぎて・・・実はご存知でいらっしゃらない・・という方も多くいらっしゃるようです。

その根拠法令とは・・ちょっと長い名称ですが。。

日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法

と呼ばれる法律です。
長いので、略称として「入管特例法」などと呼ばれたりもしますので、この略称のほうだけでも覚えておかれるとよろしいかと思います。

さて。。
冒頭で、「日本で出生した場合には・・」と表現させていただきましたが、これも実は上記の法律にしっかりと既定されている「ルール」なのです。

具体的には、「入管特例法」の第二条(定義)の第2項というところに・・
以下のような既定があります。

(定義)
第二条
2 この法律において「平和条約国籍離脱者の子孫」とは、平和条約国籍離脱者の直系卑属として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留する者で、次の各号の一に該当するものをいう。

ちょっと難しいので詳細なご説明は省略させていただきますが、上記のうち、
「・・・本邦で出生しその後引き続き本邦に在留する者・・・」という部分について、とりあえず注目していただければと思います。

ちなみに、「本邦」とは、「日本」のこと・・と思っていただければよろしいと思います。

この部分が、実は、在日コリアンの皆様が「特別永住者」の資格を取得するための「大前提」となっているのです。

簡単な表現に変えて、かつ、2つに区切ってみると、以下のような条件になるといえます。

①日本で出生したこと。
②出生してからずっと日本住み続けること。

このうち、の条件のほうは、例えば、「留学」とか「仕事上での海外赴任」とか・・で、何年か日本を離れる・・といった場合には、特段問題になることはありません。
※ただし、その場合に重要なのは、必ず「再入国許可」を取得してから日本を出国し、かつ、その「有効期限が切れない」ように更新を続けておくこと・・です。

さて、今回の「本題」はのほうの条件です。

実は、最近の事例でも実際にあったことなのですが・・

ある在日コリアン(韓国籍)同士のご夫婦に子供さんが生まれる予定でしたが、出産の直前に「東日本大震災」が発生したため、奥様は、ひとまず危険を避けるため、ご親族を頼って韓国にわたり、韓国で無事子供さんを出産なされました。

ただ・・この場合、上記の

①日本で出生したこと。

という条件からはずれてしまうため・・

そのままでは、「特別永住者」の資格が取れないことになってしまいます。

ただ。。こうしたケースについては、実務上、特例的な措置がとられており、少し遠回りにはなりますが、一定の手続きを踏むことによって「特別永住者」の資格を取得することが可能です。

以下では、その一般的な流れについてご説明してみたいと思います。

※ご説明の便宜上、上記ご夫婦と子供さんの例を基に「設例」として以下のような状況を想定してみます。

●ご両親ともに「特別永住者」の資格を有する「韓国籍」の在日コリアンでいらっしゃる。
●ご本人(子供さん)は「韓国」で出生した。
●出生申告(出生届)は韓国国内で既に済ませてある。
●ご本人(子供さん)のパスポート(旅券)も韓国国内で申請し、既に発給を受けている。
●ご両親は、あくまで「出産」のためだけに韓国に「里帰り」したものであり、今後はご本人(子供さん)を韓国で生活させるつもりはなく日本に永住させるつもりである。

以上のような想定ですので、上述の条件のうち、のほうの条件は、必然的に満たせる状況となるのは明白です。

問題はのほうですが・・

法律の規定に沿えば・・「日本で出生していない」状況ですので、明らかにの条件を満たしていないことになるのですが。。

この先、以下のような手順で手続きを進めることによって、「特別移住者」の資格を取得することが可能です。

(1)ご本人(子供さん)は、韓国で発給を受けたパスポートを基に、日本に入国する。
※ただし、入国の時点では、通常は「短期滞在」といった、韓国国内に居住する方が観光等で来日する場合と同様の在留資格が付与されることになると思われます。

(2)ご両親の居住地であり、ご本人(子供さん)もこれから住むことになる予定の市区町村役場の「外国人登録」の窓口で、ご本人(子供さん)の「外国人登録」の申請を行い、新規登録をしていただく。
※ただし、この時点でも、やはりまだ在留資格は「短期滞在」のままで、ひとまず登録されることになります。

(3)今度は、居住地を管轄する「地方入国管理局」(又はその支局もしくは出張所)に出向き・・(※子供さんが直接出向くのは現実的ではありませんので、もちろん、ご両親(のいずれか)が代理で出向き)・・「特別永住者」の資格を許可していただくための申請・・を行います。
「特別永住者」の資格を許可していただくための申請・・というのは法律上の正式な用語ではありませんが、そのようにご説明すれば入国管理局のほうでも理解していただけると思います。

実際の申請に向けては、
●申請書
の他、いくつかの添付書類を提出するようにとの指示があるものと思いますので、その指示にそって必要書類をそろえた上で一式提出します。

入国管理局側では、ひととおりの「審査」をした上で、特に書類や記載内容等に不備がなければ、原則として「100%」・・「特別永住者」の資格を許可(付与)してくれます。

(4)入国管理局から「特別永住者」の資格が許可(付与)されたら、再度、市区町村役場の「外国人登録」の窓口に出向き、「在留資格を『特別永住者』に変更した(許可をもらった)旨」申し出て、外国人登録の変更登録の手続きを行う。

入国管理局からの許可がおりていれば、市区町村役場の「外国人登録」の窓口では、事務的に在留資格を「特別永住者」に書き換えていただけますので、それで手続は完了します。

つまり、日本国外で出生したご本人(子供さん)も、これで無事「特別永住者」の資格を取得できることになるというわけです。

・・上記のように、国内で出生した一般的な場合に比べると、「入国管理局」での申請・許可・・というステップが必要になりますので少し煩雑とはなりますが・・

必ず「特別永住者」の資格は得られますので、ご参考になさってみてください。

★ただし、ここで少しだけ注意点の補足をさせていただきます。
「特別永住者」の条件として上述させていただいたように・・

②出生してからずっと日本住み続けること。

という前提がありますが、ここで重要なのは、、あくまで「出生してからずっと・・」という部分です。

例えば、出生してから何年か・・例えば2年とか3年とか・・韓国に居住してから・・上記の手続をとろうとしても。。
その場合には、「当初は日本にずっと住み続ける意思を持っていなかった」とみなされ・・上述のような手続きをとっても「特別永住者」の資格を認めてもらえなくなる可能性が高いですので、その点はくれぐれもご留意ください。

★また、上記の手続きは、必ず、ご本人(子供さん)が出生後「最初に日本に入国したとき」に入国管理局で行うようにしてください。
たとえば、上記の手続をとらないまま、「短期滞在」の在留資格で何度か日本と韓国を往復したりしてしまった場合にも・・やはり、「当初は日本にずっと住み続ける意思を持っていなかった」とみなされ・・上述のような手続きをとっても「特別永住者」の資格を認めてもらえなくなる可能性が高いですので、その点もくれぐれもご留意ください。

なお、上記の「特別永住者」の資格を許可していただくための申請・・に関して提出を要求される書類等については、管轄の入国管理局によっても少しずつ取り扱いが異なる可能性もありますので・・

申請に先立って、事前に管轄の「地方入国管理局」(又はその支局もしくは出張所)でご相談なされてからご準備されるとよろしいと思います。

以上、多少なりともご参考になる情報でしたら幸いです。

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